備品庫の密室で、ふたり - 3/4

その夜。
アルクノア兵舎、下級隊員用の簡素な部屋。

リースはベッドに横になったまま、天井を見つめていた。

――いや、正確には“天井を見ている”というより、“思い出さないようにしている”真っ最中だった。

(……はぁ……もう、ダメだ……)

顔に枕を押し当てて、ゴロン、と寝返り。
再び思考があの時の感触を呼び起こす。

(セラさんの、髪が……ふわって当たって……肩が、近くて……)

(っ、胸、胸元、視界に……!)

「あ~~~っっっ!!」

バッと飛び起きたリースは、そのまま頭を抱えてベッドの上で小さく丸まる。

「……違う、見ようとしたんじゃなくて……事故だし……! でも、でも……!!」

再び倒れ込んで、布団を引っ被る。

それでもなお、セラのやわらかな笑顔、ほんのり赤らんだ頬、
ふとした時に感じた匂いまでもが、記憶に残って離れない。

(――柔らかかったな……)

「ばかか俺はああああああ!!!」

夜中、兵舎の一室から小さく響くうめき声。

当然ながら、誰にも気づかれない。
アルヴィンのニヤつく顔が脳裏に浮かび、居心地の悪さから
リースは布団の中の身体をさらに縮こませた。

(……セラさん。明日、顔合わせられるかな……)

思春期の悶絶は、静かに続いていた。


(次ページ/あとがき)