「……っと、ごめんなさい、リースくん。扉、閉めますね」
「あ、はい――」
ガチャン。
次の瞬間。
低く鈍い音とともに、扉がぴたりと閉まった。
その場には、リースとセラの二人だけ。
「……あれ?」
「……っ、ちょ、ちょっと待ってください……これ……開かない……?」
セラが取手を押しても引いても、びくともしない。
どうやら、内側から鍵がかかった形になってしまったようだった。
「す、すみません……僕、外側に何か引っ掛けてしまったのかも……っ」
「いえ、大丈夫ですよ。焦らなくていいです。しばらくすれば誰か来てくれるはずですから」
淡く笑って、セラは狭い空間の中でしゃがみ込んだ。
が――そのスペースは、想像以上に狭かった。
リースが慌てて後ろへ退こうとするも、背中はすぐに棚に当たり――
ドサッ。
「――っ!!」
「……リ、リースくん!?」
二人は勢いのまま、体勢を崩して――
セラがしゃがみ込んだその膝の上に、リースが倒れ込むかたちになってしまった。
ふわり、と。
淡く甘い香りが鼻先をかすめた。
「っ、す、すみませんっ、すぐ、どきますっ!!」
「ま、待って……頭、ぶつけちゃいますよ」
そう言って、セラがリースの頭に手を添えた瞬間――
彼の頬が、真っ赤に染まった。
(……やばい……距離……近すぎる……っ)
視界の中、セラの胸元がふわりと揺れていた。
ブラウスの布地の隙間から、うっすらと肌が――
「ぐっ………!!」
「り、リースくん? どうしました?」
「な、なんでもないっ……です!! ちょっと、あの、すみませんっ!!」
思わず背を反らせるも、天井が低くて頭をぶつける。
鈍い音と同時に、セラが「あっ……」と手を添え――
再び、額と額が近づいてしまう。
二人の距離、ほんの数センチ。
空気が、やたらに熱い。
「……あの、セラさん、ほんとに、すみません……僕、今、目、どこ見ていいか……」
「ご、ごめんなさい……下がろうにもすぐ後ろが壁で……」
胸の鼓動だけが、やたらとうるさい。
そんな二人の間に、遠くから誰かの足音。
どうやら、誰かが備品庫の扉に気づいたようだ。