静かに寄せられたまま、セラはジランドの腕の中で身じろぎもしなかった。
拒むでも、誘うでもない。
ただ、彼に身を預けることが、何よりの応えであると知っていたから。
ジランドはその細い肩を片腕で支え、もう片方の手で彼女の髪をそっとかき上げる。
露わになったうなじへ、息を吸い込むように顔を寄せた。
「……甘い匂いだな」
耳元で囁かれた声に、セラの睫毛がかすかに揺れる。
声の震えはなかったが、背筋を伝う熱が、じんわりと全身を染めていく。
彼の唇が、首筋にそっと触れる。
濡れた吐息と共に、肌をなぞるような口づけ。
唇が触れたところを、今度は舌先が柔らかくなぞる。
「……っ……ジランド様……」
微かな声が漏れ、肩がすくむ。
ジランドはその反応に口元を綻ばせながら、首筋から鎖骨へと、さらに舌を滑らせていく。
触れるだけのキスではない。
味わうように、慈しむように、そこにある肌の熱を確かめる。
「嫌か?」
低く問いながらも、その声には確信めいた余裕があった。
セラの頬は赤く染まり、視線は揺れたまま伏せられている。
「……いえ。ただ、こんなふうに……されたら……その……」
言葉を探す間にも、彼の唇は鎖骨のくぼみに降り、そこに軽く吸いついた。
痕が残るほどの強さではない。けれど、熱の余韻だけは確かに残していく。
「……俺は、お前に触れるのが好きだ」
ジランドの指先が、セラの肩口から腕へとゆっくりと滑り降りる。
衣服の上からではなく、素肌をなぞるように。
その動きに、上から羽織っていたカーディガンが自然と落ち、はだけていく。
ひやりとした指先が肘の内側に触れた瞬間、セラは小さく声を漏らした。
「……んっ……」
その声に、ジランドの目が細められる。
唇は離れ、代わりに頬へ優しい口づけを一つ落とした。
「……もっと触れたいが、今日はここまでにしてやる」
その言葉には、ほんの少しの未練と、確かな理性が滲んでいた。
セラは何も言わず、ただ彼の胸に額を預ける。
鼓動が聞こえる。
彼の、そして自分の――
重なる音に包まれながら、ふたりはそっと目を閉じた。
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